3-河南が可愛い

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「河南、あーん」 「『あーん』じゃねぇよ。どうせ口開けたら手ぇ引くんだろっっ」 本気でケーキを見せつけてると思ってるらしい。発想が小学生だ。 ケーキを切り分けたフォークを河南に握らせる。 「ほら、河南、あーん」 今度は俺の言葉に合わせて素直にぱくりと食いついた。 そして、ニヘ……と、とろけた笑顔。 「美味いか?」 「ん!」 河南はそのまま当たり前のように俺のケーキにフォークを刺して切り分け、口に運ぼうとして『はっっ』っと俺を見た。 「いいよ食って。そのあと俺にもちょうだい?」 「ん!」 満面の笑みでケーキを頬張る。 「河南、あーん」 俺が口を開けると、あせりながらもケーキを取り分け口にいれてくれる。 「ん、美味い」 俺の笑顔に河南がまた、ニヘーっと頬を緩めた。 まったく、ラブラブだな。 『ケーキ、あーん』なんてバカップルなこと、これまで求められたことはあっても、自分から仕掛けたことはなかった。 そしてケーキを食べながら河南が『あの眼鏡も似合っていた』などとまた俺をほめる。 河南が俺を好きだというのは知っていたけど、ここまではっきりと想いをぶつけられたことはなかった。 誰にカッコいいと言われるよりも気持ちがいい。 フォークを放さない河南は、ケーキを食べてはとろけた笑みを見せ、思い出したように俺にケーキを差し出す。 結局俺は二口食べただけで、あっという間にケーキは無くなった。 無邪気だな河南。 そしてコーヒーを飲みながら、また俺のカッコ良さをほめる。 どの眼鏡が似合ってたとか、あの色がいいとか。あの形は斬新だけど俺なら違和感なかったとか。 ほめる比重がやや眼鏡寄りな気がしないでもないけど、頬を上気させて話す河南の俺への愛情は疑いようがない。 というか、俺への愛が止まらない。 どんだけ愛されてるって実感させれば気が済むんだ河南! ラブラブタイムを満喫してカフェから出ると、外のイベントスペースでミニライブをやっていた。 取り立てて興味はなかったけど、こういうのもデートらしいだろうと思い、ステージからちょっと離れた観覧用のベンチに座る。 俺の隣に遠慮がちにちょこんと座った河南の息が白い。 ずっと屋内にいたから気づかなかったが、やっぱり外は寒い。 けど、冬の寒さなんか割り込む隙がないくらい俺たちは熱々だ。 隣に座る河南との間をつめて腰に手を回す。 河南のことだから恥ずかしがって逃げるかと思ったが、大人しく抱かれたままになっている。 さっきのカフェでラブラブして、今度は公衆の面前でイチャイチャ。 ミッション達成。 イェス!
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