4-河南は優しさの大売り出しに遭遇する

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いくらコイツが年に一度の優しさ大売り出しをしてるからといて、あまり男にすり寄られたら、さすがに引くかもしれない。 加減が難しい。 けど、温もりは貴重で……。 つか、いつまでこんな寒いとこにいるんだ。 ちょっと高遠を見上げると、ニッコリ微笑まれた。 う……。 イケメンスマイルが想像以上に近かった。 こっそり近づいていたせいで、距離感がよくわからなくなってたみたいだ。 てか、最初はちょっと腰あたりに手を回してたくらいだったのに、足はぴったりくっついて、完全に高遠の腕の中で、まるで恋人みたいだ。 これは……ダメな気がする。 クラスの……いや、同じ学校の女子に見られたら非難囂々かもしれない。 怖いなぁ……。 けど、温かいんだよなぁ……。 やっぱいいニオイするし。 このニオイ、フェラ……? フェラなんとか。 あれ?なんかさらっとエロい事言ってなかったっけ? セックスの香り? ユニセックス? 良くわかんねーけど、たぶんなんかエロい事言ってた。 くそっ。どういう意味だ。 このニオイが好きとか言ったら、なんかスケベなヤツみたいに思われたりしそうでヤだな。 いや、それだったら、そんな香水つけてるヤツのほうがスケベだ。 いやいや、コイツなら、エロいこととかスケベなこと言っても、女子とかに引かれること無く『キャーっっ!』とか喜ばれそうだよな。 ちっ、イケメンはずるいな。 「河南、寝てるのか?こんなところで寝ると、冷えるぞ」 はっ! とりとめのないことを考えながらダラダラした曲を聞いてたせいで、ちょっと眠りかけてたらしい。 完全に高遠の胸にもたれてしまっていた。 よだれは出てない。良かった。 けど、そんなに寒くない。つか、温かい。 ……と思ったら、あれ? いやいやいやいや、まてまてまてまて。 いつの間にか高遠に斜めにもたれかかって、後ろからしっかり抱きしめられてるし。 おいおいおいおい、優しさの大売り出し期間なのはわかってるけど、ちょっとこれは特売過ぎるだろう。 そっと腕を引いて離れようとするけど、腕が全然緩まない。 そして大丈夫か?って表情で顔を覗き込まれる。 なんだよもう。 くそっっ。 だから……。 女子だったら、こんなのもう完落ちだから。 うう、嫌だ!頬が熱いっっ。 つうか、こんなトコで男同士がこんなぎゅぎゅっと抱き合ってたら変だろう。 ……あ、いや抱き合ってないし。 オレが一方的に抱かれ……いやそれも違う。 腕をまわされて抱きかかえられてるけど、別に抱き合ってはいない。 ……けど、オレの認識がどうであれ、抱き合ってる風には見えるだろう。
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