5-河南がすねる

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「眼鏡、どうする?最初の店に戻る?」 河南が頬を上気させて聞いてきた。 「あ、いや、大丈夫」 「え?じゃぁ、ここで買うのか?」 「んー。まあ、一旦出ようか?」 店を出て、ショッピングモールも出て、街中を歩いていると、だんだん河南の歩くペースが落ちて来た。 あきらかに不満顔だ。 理由はわかっている。 俺が眼鏡を買うと思っていたのに、向かう先はどう考えたって帰り道。 でもこの先に、眺めのいい、夜景の綺麗な公園があるんだぞ? わかりやすいデートスポット。 んー……でも、この調子じゃ、公園に着いても不機嫌なままだろうな。 しょうがないので公園のそばにあるファーストフード店に立ち寄った。 頼んだのは、二人とも期間限定のハンバーガーのセット。 俺にとっては、これが夕食代わり。 多分、河南も同じだろう。 番号札を持って席に座る。 不機嫌なまま食べても美味しくないだろう。 ハンバーガーセットが来るまでに、ちょっと河南のご機嫌を取りたい。 けどその前に、隠し事でもなんでもないのに、まるで隠し事をしてるみたいになってしまった『俺の事情』を告白した方がよさそうだ。 「河南、ちょっと言わなきゃいけないことがあるんだ」 河南の短い髪をすくように頭を撫でる。 むくれた表情のままちょっと首をかしげる河南。 やっぱり可愛い。 「多分だけど、今日、俺が眼鏡買うって思ってたんだよな?」 「えっ!それって、やっぱ…………買わないのか!?」 河南が愕然とする。 俺が眼鏡を買わないって、ただそれだけなのに、天変地異でも起きたみたいな、信じられないって反応……。 いけない。可愛くって笑ってしまいそうだ。 「俺な、中学校に上がる時にマンションを引っ越したんだ」 「は………?」 急な話の転換に河南がきょとんとする。 ……だから、可愛いって。 「それまでビルの谷間みたいなところに住んでたんだけど、今住んでるとこは高台でかなり眺めがいいんだよ」 「あー、知ってる。ちょっと高級な住宅街の端っこのマンション。すげぇイイとこ住んでるらしいな」 俺の家もチェック済か。 愛だな、河南。 「そう、海と山と、隣の隣の市どころか、天気が良ければ隣県の半島が見える」 「へぇ!!!!すげえな!」 たったこれくらいのことではしゃいで可愛いな、河南。 「ん、じゃ見に来てみるか?」 「うん!半島かぁ!え?高遠んちに行くのか?」 「ま、この時間はもう見えないから明日と明後日と、どっちなら予定空いてる?」
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