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「初めから眼鏡を買うつもりはなかったんだ。けど、眼鏡の試着をすごく楽しんでる河南を見てたら……俺も楽しかった」
う……なんだなんだその甘い口調は。
また、オレに『女子だったら』とか妄想させるつもりか?
オレの動揺を他所に、高遠が持っていたバッグをあさる。
取り出したのは最初に行ったショップの紙袋だ。
「それ……なんだ!眼鏡買ってたのか!!」
「ああ、そうなんだ。ここで開けていいか?」
「もちろん!!!」
なんだよ『眼鏡はいらない』とか、衝撃の告白をサラッと流したと思ったら、結局眼鏡買ってるのかよ!
高遠が何を選んだのかスゲェ楽しみだ。
まぁ、よっぽど変なのじゃない限り、どれをかけても高遠はカッコいいけどな!
けど、あれ?
受け取りは、トイレとか言ってなかなか戻って来なかったあの時かもしれないけど、レンズを作るための視力検査とか、そんなのしてなかったぞ?
高遠が取り出した眼鏡は黒ブチだけど角度によってブルーが見える控えめオシャレなフレーム。
あ……それ……。
うーん。オレは大好きだけど高遠にはもっと似合ってたのがある気がする。
と、思ったら、高遠が手を伸ばしてその眼鏡をオレにかけた。
「うん、似合ってる」
「うん????」
まあ、高遠よりはオレ向きだろう。
けど?
「え?いや、オレに似合ってもしょうがなくないか?」
「いや、いいんだ。俺が河南のために選んだ眼鏡だ。プレゼントするから、大切にしてくれよ?」
そう言ってオレの頭をナデナデする。
「え??えええ???プ、プレ?いや、ダメだろう!こんな高いもの!もらう意味がわからない!」
「そんな高くないって知ってるだろ?もらう意味って……。河南に似合ってて、すごく可愛い。明日会うときもそれかけて来てくれよ。ここ、ほら壁の装飾が一部鏡になってるから、確認してみたら?」
そう言われて思わず鏡で確認してしまった。
でも、壁にデザイン的に配置された鏡じゃ、小さすぎて目元しか見えない。
「いや、そうじゃなくて!こんなものもらえないって」
「似合ってる」
「あっありがと……。でも、もらえない」
「その眼鏡、好きじゃなかった?」
「好きだけどぉ…………」
「河南、洗面所までいったら大きい鏡あるし、そっちで確認しよう?スゴイ似合ってて可愛いって再確認、な?」
そのまま立ち上がった高遠に、すっと手を引かれて、ついつい洗面所について行ってしまった。
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