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「河南、お前が一歩踏み出したときから、こうなる事は決まっていた。俺は今日一日でお前の可愛さを知ったし、散々お前にカッコいいと褒めちぎられて、最高に気分がいい。今日という日を共に過ごしてくれたお礼を、これからずっとしてやる。河南……これからはお前しか見ない。お前のモノになってやる。望むだけ好きって言ってやる」
「…………はぁ……?なんだよそれ」
小さい声で不満を漏らす。
「『なんだよ』ってお望みの口説き文句だ。これじゃ足りないか?」
「た……足りないよ。『望むだけ好きって言ってやる』って……。まだ一回も好きとか言ってもらってないし」
……そうだっただろうか?
もう何度も言った気でいた。
仰向けで寝そべったままの河南の耳に口を寄せる。
耳にふわりと唇がふれた。
冷たいだろうと思っていたが、かなり熱くなっている。
「河南、好きだぞ?」
「はくっっ……なんだそれ。なんか……言い方が疑問系じゃなかった?」
河南の口にする不満が可愛い。
思わず『ふっっ』と笑ったら、耳がくすぐったかったのか、河南がビクンと首をすくめた。
可愛い。
悪戯したくなる。
けど、今日は我慢だ。
口説く前に悪戯したら、本気でふて腐れてしまうかもしれない。
冷たい風が吹いてきたので、握っていた手を放して肩を抱き、また口を付けるようにして耳に言葉を吹き込む。
「河南、可愛い。好きだよ」
「……」
「河南?好きだよ。好きだ。すーき。おーい。聞いてるか?」
「……き……こえてる……」
絞り出すような小さな声が聞こえた。
恥ずかしいのか、河南は両手で顔を覆っていた。
照れた顔を見たい。
手を握ったままにしておけばよかった。
「河南、お前は?……まぁ、好きだよな?」
「なぁんっだそれっ……自意識過剰」
「過剰か?」
「………」
さっきから、すぐ黙り込む。
顔を隠す河南の手を引きはがしてみた。
「なぁ、まさか好きじゃないなんて言わないだろう?」
「………」
覗き込むとサッと目をそらされる。
「わかってる。たとえ口に出さなくても、河南は俺の事、大好きだって知ってるから」
「ぁんだそれっ……んんぁむ……」
黙り込むか『何だそれ』しか言わないボキャブラリー貧困な河南の口をまたキスで塞いだ。
んちゅ……。
こんな公園のベンチでするには少し熱烈過ぎるキスだ。
多分、河南は気付いていないだろうが、さっきから数メートル先をウォーキングや犬の散歩をしている人が通っている。
しかし、俺のキスを受ける河南は、水が怖い小学生のようにぎゅっと目を瞑っているので、もうしばらくはバレないだろう。
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