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「えー。たしかにそう言われたら、恋人っぽいけど、でも恋人になった覚えない」
「河南は、俺が『河南が大好きで、デートもするし、キスもするけど、恋人は他の人にする』と言い出したらどうする?」
「はぁ!? そんなダメだろう」
まるっきりクズじゃないか。オレにも『他の人』にも失礼だ。
「うん、ダメだよな」
「うん。ダメだ」
「じゃ、俺の恋人は河南しかいないだろう」
「ああ……ま、そう……だな」
なんかちょっと変な感じするけど?でも、オレにあんなことして『好き』って言っといて、付き合うのは別の人にするからなんて言われるのは絶対嫌だ。
「河南、俺がお前をバカにすることに関しては諦めろ。なぜならばお前がいい具合にバカだからだ。そして、バカな河南が大好きだからバカにするような発言は極力気をつけるが完全には止められない。止めたいなら河南が賢くなるしかない。バカな間は諦めろ」
「な、なんでまたバカバカ言うんだよ」
「ああ、だから、これから気をつける。許せ」
「本当に?」
「本当だ。そして、河南を好きなのも本当だ。疑うな」
「……」
勝手に顔がにんまりしてしまう。
そのにんまりを見られたくなくって、高遠の肩に顔を擦付けるようにして隠した。
すると拘束するように強くオレを抱きしめていた高遠の手が緩んで、頭をそっとなでてくれる。
「もう、帰らないとな。別れは寂しいけど、泣くなよ。明日また会えるから」
「何だそれ泣くわけないだろ」
「寂しくってたまらないって顔してるぞ」
「………」
否定できない。
高遠の温もりから離れるのが寂しい。
あ、マフラー……返さないと。
高遠だって寒いだろうし。
けど……。
寂しさを振り切って、オレは高遠から離れた。
なのにまたクッと引き寄せられた。
う、もしかしてマフラー返してないのバレた?
ちろっと高遠を見上げる。
ちゅっ。
また、キスされた。
うっっっっ。
路上だぞ。
「サヨナラのチュウだ。あまりすると離したくなくなるから一回だけな?」
一回だけって……これでも充分ダメージがデカイ。
くそっ。キス魔め。
誰かに見られてたらどうするつもりだ。
てか、ここの角、同級生ん家だし……。
せっかく帰ろうと踏ん切りをつけて離れたのに、キスされたせいでまた離れがたくなってしまった。
「河南、姿が見えなくなるまで見送るつもりだったけど、俺がいるから離れられないんだな。可愛いやつめ。じゃあ、同時に離れよう。また明日な」
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