2-河南はその足をそっと上げてみた

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ガッ、ジャリ! 嫌な音がした。 そして足の下の感触……。 振り返るとすぐ後ろに高遠がいて、半眼でオレを見下ろしていた。 恐い。 そっと足をどけるけど、そっとどけたからといって被害が軽くなるわけじゃない。 オレの足があった場所には修理するより買った方がいいと一目でわかる状態の眼鏡があった。 ヤバい。 けど、なんでこんな真後ろに高遠が立ってんだ。近過ぎるだろう。 しかし……ざまぁ。似合わないダサ眼鏡を退治してやった。 瞬時に色んな事が頭をめぐる。 二人、目が合った。 「あっっっ……明日……弁償」 オレの弁償の提案を高遠は断った。 正直ホッとした。 眼鏡の弁償代を親に無心するというのはバツが悪かった。 代わりに買い物につき合ってくれと言われた。 弁償する代わりにそれで済むのならいくらでもつき合う。 それに、高遠の眼鏡……。 買い物につき合うってことは、オレが多少なりとも眼鏡選びに口出ししていいってことだろう。 高遠は黒髪は艶やかで、目元涼しげな、長身イケメン様だ。 しかし、オレが壊してしまったのは、はっきり言ってヤツに似合わない激ダサ銀ブチ眼鏡だった。 子供の頃のはいつも眼鏡をかけていた高遠だが、今じゃたまに授業中にかけてるのを見かけるくらいだ。 だからなのか、ヤツは小学校高学年か中学生の頃に作った眼鏡を恥ずかしげもなくかけていた。 いや、恥ずかしいから、たまにしかかけないのかもしれない。 せっかくなら一本と言わず、安い眼鏡を何本か買っていろいろ掛け替えればいいのに……。 高遠はオレ様でムカつくヤツだが、イケメンだからちょっと個性派なオシャレ眼鏡なんかも似合いそうだ。 最近結構きてるレトロなボストンタイプのフレームを一本と、インテリ風のスクエア、それからド定番のオーバルタイプで個性的なデザインのものを一本とか……。 くそ、イケメンはなんでも似合いそうだ。 しかし、オレ本当にグッジョブかもしれない。 もうずーーーーーっっとあのダサ眼鏡が気になって、『眼鏡変えればいいのに』って思いながら、しょっちゅう高遠を見てしまっていた。 オレの中の『気になる眼鏡、不動のワーストワン』高遠。 これでもう気にしなくて済む。 いや、イケてる眼鏡になったら、それはそれで見ちゃうかな。 まあ、楽しみが増えるのはいいことだ。 オレは眼鏡好きだが、視力はやたらといいから眼鏡屋には足を踏み入れづらかった。 伊達眼鏡にも手を出しづらい。 千円ちょっとの安い眼鏡もあるけど、やっぱなんか違うんだよなぁ……。 最低でも五千円くらいのフレームから。 でも、オシャレに疎いオレが目も悪くないのにオシャレ眼鏡で粋がってるとか、すげぇ恥ずかしくって手が出せなかった。 二千円のシャツを買う勇気がないのに、たまにしかかけないオシャレ眼鏡って……。 ぜったい眼鏡が浮く。 どう考えたって、この中坊臭い服装をどうにかする方が先だよな。 まあ、とにかく一緒に行くのが高遠だってのは、ちょっと引っかかるけど店員の目を気にせず好きなだけ眼鏡を見られるのは楽しみだ。 一度行ってみたかったオシャレ眼鏡のショップも高遠となら気後れせずに入れそうだし!
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