恋の自覚

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 その手は驚くほど冷たく、華奢だった。  指なんて、細すぎて少しでも衝撃を与えたら折れてしまうんじゃないかと思った。  ガラス細工に触れるように柔らかく彼女の手を包み込むと、僕たちはアパルトマンへと向かった。  街灯の先にある道を過ぎて右に曲がると、赤や黄色や緑の色鮮やかな屋根が連なるアパルトマンが建ち並ぶ。  その一番端にある赤の屋根が僕の住むアパルトマンだ。  モントリオールの冬は雪深い。  積雪で扉が開かなくなるのを避けるため、どの家の扉も高い位置にあり、扉まで階段が伸びていた。
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