モノローグ ーアンジュの独白ー

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 君に出会う1年前の聖夜。  私は、病室から降り積もる雪を眺めていたの。  見下ろした先にある小さな広場には、誰もいなくて、ただ闇夜を薄暗い電灯の灯りだけがポツポツと照らしてた。  イヤホンからはクリスマスキャロル「Les anges dans nos campagnes」が流れ、私は孤独な聖夜を慰めていた。  その時ね、不意に、広場を横切る影が見えたの。  暗いし、下を向いているから顔はよく見えなかった。  黒いコートを着ていて、ポケットに手を突っ込んでる男性ってことだけしか分からなかった。  こんな時間に一人で歩いてるなんて。  私と同じで、クリスマスを一緒に過ごす人がいないのかな......  そんな思いで、私、彼の姿を見つめてたの。
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