モノローグ ーアンジュの独白ー #2

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 ルネが教会の最後尾に立っている。  なんの興味もなさそうに前方を見つめる彼の瞳は、何も映していないかのようだった。  キリエが終わり、「Les anges dans nos campagnes」を聖歌隊が歌い始める。  私たちの思い出の曲......  様々な場面が脳裏を駆け巡る。  私のクリスマスキャロルを聴いて泣いてくれたルネ。  喉が焼け付くような甘さの絡み付くエッグノッグの味。  クリスマスツリーを見つめる私の横顔を見つめるルネの瞳。  毛布に染み込んだルネの匂い。  二人の重なり合う鼓動の速さ。  身体の奥に感じたルネの温もり......  ルネの色を失くしていた瞳がみるみるうちに色を取り戻し、後ろを向いたかと思うと教会の扉を開けて出て行った。
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