2233人が本棚に入れています
本棚に追加
「あなたは、その方をバカになんてしていなかったのでしょう?そんな先輩が一人いるというだけで、どれだけ救われたか。リストラのことだって、逆にあなたに知られたくなかったから、最後まで言わなかったんでしょうねえ。知ってしまえば、あなたは同情したでしょう?あなたにはね、職場を去るその時まで、きっと態度を変えて欲しくなかったのよ。」
ようやく、今になって告白できたのね、その方、とお婆さんが付け足した。
「あらあら、もうこんな時間!ごめんなさいねえ、私ったらあなたに長々と付き合わせてしまって!」
俺が言葉を探していると、お婆さんが店内の時計を見て大きな声を上げた。
俺も、自分の腕時計を見る。
確かに、そろそろ駅に向かわないといけない。
話を聞いてもらった礼に、ここの支払いをさせてほしいと頼むと、お婆さんは恐縮した様子で、それでもありがとうと言って俺に任せてくれた。
最初のコメントを投稿しよう!