第1章

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外に出たところで、お婆さんがお守りを見せて欲しいと言ってきた。 店内で話を聞いてもらって慰めてもらったし、なにやら神様に関係する仕事に就いている人らしいから、いいかな? 俺は、首から下げているお守りを、襟元から出した。 それをじっと見たお婆さんが、不意に頭を下げると、手をぱぁん!と打った。 その瞬間の感覚を、どう話したらいいんだろう。 急に、自分が立っている場所が、喫茶店の前じゃなく・・・そうだな、神社の境内の中、それも人気がない深夜とか早朝とか、そんな雰囲気に包まれた気がした。 「たかまがはらに   かむつまります・・・」 お婆さんが、小声で何か唱えた。 それに合わせて、お守りが僅かに熱を帯びたような気がした。 1分もなかっただろうか、もう一度お婆さんが手を打つと、急に周囲の音も色も戻ってきた。 「さて、駅まで送りますね。」 いつの間にか、白髪の青年が運転する軽乗用車が、自分の横に停まっていた。 続く(次、最後です)
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