期間限定の恋人(前篇)

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「は?」 あたしは思わず戸惑う。そこか? 彼女は考えを巡らすように言葉を続けた。 「二人とも、特にタツルさんの心酔者ってわけでもなさそうだし。だとしたら、アキちゃんのためにここまでしてることは一目瞭然じゃない。そこまで二人が入れ込むんなら、相当いい女なんじゃないか、と期待されてる気がするな。ただでさえタツルさんの惚れ込みが尋常じゃなかった、と噂が立ってるのに」 「えー…。あたしたちのせい?」 あたしは唸った。でも、今更ガードを止めたら男共がここぞとばかりに群がってくるでしょ?どうすりゃいいのさ。 「男連中だけじゃないのよ。女の子たちも結構、気にしてるわよ。イケメン二人に守られて…、って。チサトさん、最初の頃は本物の女の人と思われてたし、その後は心が女性の人かとなったけど、最近は女装なだけの男の人だって知れ渡っちゃったし」 「仕方なかったんですよ…」 あたしは呻くように呟いた。 あいつらのセックス中毒は半端ない。まず俺は、女性と思われて次から次へと口説かれた。もう本当に虫か?というくらい群がってきたものだ。それで速攻、実は男性だと声を大にして公表することにした。そうしないと収拾がつかないと思ったのでやむなく。 そうしたら。…それはそれで、困ったことになった。そういう傾向のある人たちがマジで口説きに来るのだ。同性愛者、バイセクシャル。果ては『興味があるから、一遍男とやってみたかった』というヤツらまで押しかけてきた(実はこれが意外に多かった。見た目が女性だから、ノーマルの男からしたらハードルが低く感じられるのかもしれない)。 自慢じゃないが、実は俺は男に口説かれることに対して結構なアレルギーがある。それはチサトの生前の諸々に関係してくるのだが、ここでは触れない。朱音の時は自分が女性だったせいか全く発現しなかった症状だが(でも、ついに男性を真剣に愛することがなかったのは意外と関係あるのかもしれない)、ここにきて久々にあの肌の粟立つような感覚を思い出させられる羽目になった。 だったら女装なんかしなければいいじゃないか!と思う向きもあろうが、これはこれ、自分のためにやっていることだから。断じて他人のためじゃない。女の子に、セクハラ嫌なら短いスカート履かなきゃいいじゃない!と言うのと同じことだ。 服は自分のために着るものだ。
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