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「やっぱりアキの魅力は、あんな遊びまくりの連中でも逆らい難いのかなぁ。隠しきれない色気が伝わっちゃうのかね~」
あたしは内心似たようなことを考えたにも関わらず、自分の台詞にしみじみと深く頷くジュンタにマジで呆れた。
デレにもほどがある。こいつ、心底阿呆だ。
ジュンタはふと真面目な表情になり、あたしを見て改まった口調で言った。
「まぁ、いざとなったら最終的には瞬間移動で逃げるよう口を酸っぱくして言ってあるけど。その前段階だって結構不快な思いする可能性があるから、ちょっと引き続き気をつけてやって。俺も周りの信頼できそうな霊になるべく声かけてるからさ」
「わかった…」
回廊の向こうで手を振ってるアキに手で合図し、そっちへ歩き出す。なかなか気苦労が絶えないな。本当に、全く。
何もかもタツルのせいだと思う。彼女をこんな風にひとりで置いていくから…。
そんな中、事件は起こった。
例の曰くつき交差点の案件。あたしは結局アキを一緒に連れてきた。ジュンタの言った通り、アキは簡単に全てをこなしてみせた。何となく彼女の保護者のつもりでいる自分だが、仕事のスキル上の優位は特にないことがわかった。そりゃそうか…。
「あともうちょっとで終わりそうだね」
あたしの隣に近づいてきたフミノさんが話しかける。仕事終わりの解放感で気分のいいあたしも、にこやかな表情を彼女に向けて答えた。
「本当ですね。今回はどのくらいかかったかな。三日くらい?」
「惜しい、二日。集中してると時間の感覚確かに狂いがちだけどね。チサトさん、こういうの向いてる気がするな。なかなかここまで集中できないもん。…ところで、アキちゃんは?今日一緒なんだよね」
「え、そこに」
振り向く。周囲を見渡す。近くにいると思ってたけど。
「いませんか?…なるべく近くで仕事するよう言っといたのに」
「まぁ、作業が本格的に始まっちゃうとね。実際そうも言ってられないけど」
少し浮かんで、交差点全体を見回す。夜目は利くけど、歩道橋の陰とかはよくわからない。俺の目に霊が薄く光って引き立つように何体も見えるが…。
「でも、これだけ人目があるんだから。そんな変なことはないと思うよ」
俺の隣に浮かんでついてきたフミノさんが一緒にあちこち目を走らせながら、安心させるように言ってくれる。そうならいいんだけど。俺は全身の神経を集中して耳を澄ませた。
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