第1章 さいきょうのそうび

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「ヒツジ?」 「ヒツギよ、棺。人間が死んだときに出てくるアレよ」 「ああ……ヒツギって読むのかあれ」 ようやく装備品の「棺」が何て読むか分かった。 ゲームの世界じゃあ確かに、ゲームオーバーになったら棺桶は出てくるが。 ……だとしたら、なんだ。俺はつまり “棺桶に入った” わけじゃなくて、 “棺桶になった” ……ってことなのか!? 「え、じゃあアンタ、死んでないの?」 「当然だ、むしろ俺はたった今ボスを倒して、これから王女様とベイビィ・フェイスをディ・モールトする予定だったんだよ!」 「なにそれ意味わかんない」 腕を組んだツインテ少女は、氷点下の視線を俺に投げ掛けた。 くそっ、そっちだって趣味の悪い魔王パンツだろうが。 「でも……だとしたらマズイわね」 「マズイ?」 「アンタが魔王を倒したんなら、そこから本来アンタが行くべき“城”に戻らないと、イベントは進行しないわ。 そうなると、次のイベントは発生しなくなってしまう……つまり、この世界は止まったままってわけよ」 「ほう、俺は時を止めたのか」 「棺桶のクセにカッコつけないでよ、棺桶のクセに」 「ふぐっ、2回言うな!」 だが。 「なあ、イベントが進まないって事は、俺の体は……」 「まずこのままだと元には戻らないでしょうね。もしかして、1度裏イベントがエンディングを迎えたら、読み込みが再度行われてシステムが正常に戻るかもしれないけど」
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