第1章 さいきょうのそうび

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部屋に入ると、いきなりデロデロした音に変わる。ボス戦前のお約束だ。玉座には、水牛の角を生やした三つ目のデカイ化け物がいる。 どうして魔物社会でも、人間社会と同じように、偉いやつは玉座に座っているんだろうか。なんて冷静に考えてしまうから、俺には友達が居ないんだろう。 でも、猿山のボスだからと言っても、いつも一番高いところにいる訳じゃない。ライオンだってそうだ。 要は、一番快適な所にいたいんだ。だったら魔物のボスだって、自分の部屋とか、ネカフェにいたっていいじゃないか。それともここがこいつの部屋なのか。 だったら、テレビも見ない、ゲームもしないで大人しく座って待ってるなんて、どんだけ律儀な奴なんだよ。 ブモオオオオ!! おっと、持論を展開している間に、ボスが攻撃を仕掛けてきた。 俺は角の突き上げ攻撃をひらりとかわすと、腰から剣を引き抜いた。無骨な刀身、だが、片手で持っても軽い軽い。まあゲームなんだから当然か。これが現実世界だったら、そもそも俺は部屋から出られない。脂肪的な意味で。 「そりあ!」 俺の突きだした刃が、魔物の額にある目を貫いた。 ここではプレイヤーの実際の動きなんか全く関係ない。サラリーマンのノルマと一緒で、数値が全てだ。現実の世界から逃れても、待ち受けているのは、現実よりもシビアな数値設定。 単純に言うと、俺の攻撃力の数値が、敵の防御力の数値より高ければダメージを与えられる。 これに回避率や、ラックなんかが絡んでくるんだが、俺は計算していない。そもそも敵の数値が見えるようになるためには、1度その敵と戦って、特殊な魔法を使わないと見られない。 ここまで言えばお気付きだろう。 俺は、その魔法が使えないのだ。だから、どんな敵と戦っても絶対負けないように、カウントストップになるまで頑張ったのだ。
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