第1章 さいきょうのそうび

4/11
前へ
/11ページ
次へ
俺の(見た目は最悪な)攻撃は、ボスの攻撃をすべて避けると、華麗にダメージを重ねた。 ちなみに、下着姿の見た目のグラフィックは現実の俺とほぼ同じだ。説明書を読まないでヘッドギアを装着して耳元のボタンを押したら、突然【スキャン完了】の文字が目の前に現れて、勝手に個人登録されてしまったのだ。 まあ、三人称視点じゃないから、姿を見る機会はほとんど無いが、それでも、この体型じゃあ絶対に着られないだろという「伝説の装備シリーズ」を難なく着こなせてしまったときはびびった。 ちなみに、町や村で休憩モードに入ると、装備は勝手に外れるようになっているから、「外では勇者、村ではトルネコ」の俺が完成という訳だ。 どうせなら、どっちかで統一してもらいたかった。 グモモモモモモォ! 特に手こずる事もなく、ボスの雄叫びを最後に戦闘は終わった。推測では、俺の回避率は既に100%だ。ボスとはいえ、攻撃が当たるはずもない。 「よし、これでようやくエンディングだ」 下調べは済んでいる。 ノーダメージでボスを倒すと、ボスの姿が王女様に変わって、俺が王女様を抱きあげて城に戻るのだ。最新の体験型MMORPGとはいえ、なんて古典的なラストなんだ。だが、それがいい。途中で「ゆうべはおたのしみでしたね」イベントでも発生すればなお良いが、健全なゲームの世界だからな。焚き火とか、月夜のグラフィックで色々と誤魔化されそうな気がする。 ……いや、孤高のボッチを語る俺には、そんなもの必要ない。 俺は最強のボッチで、かつ、現実でもゲームでも、最強の魔法使いを目指す漢(おとこ)なのだ。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加