第2章 出動依頼に胸踊る

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夕方、帰宅した娘が慌ただしくリビングを抜けて部屋に行こうとしたので、「おかえり」とだけ背中に向かって声を掛けた。 二十歳になる息子とは、同じ家に住みながら顔を合わせることがほとんどない。 深夜に帰って来たと思うと、昼過ぎまで寝ている。 そして、いつの間にか外出していて、行動がつかめない。 それでもテルミは家族のために食事と洗濯、掃除に買い物を繰り返してきた。 「私から家族を取ったら何が残るの?」 娘は来春から社会人となり家を出て一人暮らしを始める。 息子だって、順調に行けばあと二年だ。 夫が定年する約十年後、夫婦だけの暮らしになって、テルミは焦りすら感じていた。 「大好きだけど、編み物だけでいいの?」 まだ何か出来る気がする。でも何をすればいいのか分からなかった。
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