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なんの成果も掴めないまま手ぶらで帰宅した。
午後八時、ハヤトはそれをパソコン画面の右下で確認し、キーボードを叩いてログインした。
見慣れた草原が画面に映し出され、ハヤトが操るレッドが丘に向かって立ち尽くしていた。
マップエリアは、銀河系以外、揃っている。
草原は今となってはもう庭のような場所だ。
方向を変えるとログハウスの建物が彼方に見えて来る。
かつてはソコも敵のアジトだった。けれど今はハヤトが操るレッドたちが占拠していた。
「チハ!」
「レッド。アップ版、もう手に入れたの?」
「ヒカルは?」
「まだ。どこにも無いよね。予約はしてあるけど」
レベル百超えのレッドは、この世界では相当に優秀だ。
一方、ヒカルは気まぐれでプレーしている。だからまだレベルが二十八と低い。
アップ版で銀河系を手に入れても、最前線にそのレベルは自殺行為だ。ヒカルを仲間として連れて行くのはかなり荷が重かった。
「何よりレベルアップじゃない?」
「分かっているけど、プレー時間が取れないし」
暇つぶしではなしていたけれど、ハヤトは他の仲間が来ないかと辺りを見回していた。
「ねぇねぇ、二人で行こうよ!」
レベルを一人では効率よく上げられないヒカルは、レベルの高いレッドを連れて行けば安心だった。
「みんな、どうしたんだろう?」
ココでヒカルと話しても答えなど出ない。
暇つぶしに、ハヤトは連れ出す事にした。
「草原なら死なないよね?」
二人で敵を探して歩きだした。
ほとんど一撃で倒せる敵にしか遭遇しない。
そんな相手にさえ、一撃を食らったヒカルは何度も死にかけた。
「回復の実持っているだろう?」
「袋にあると思う」
「武器って何を買ったらイイの?」
ヒカルは一番苦手タイプだ。
何でもすぐに答えを聞きたがる。
きっと日常生活でも誰かに依存して暮らしている奴なんだろうなとハヤトは心の中で思っていた。
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