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学校にいる時、ハヤトはほとんどしゃべらない。
友達もいなくはないが、それでも自分からあえて話しかける事はしなかった。
それで去っていく人もいるが、追うこともしない。
ここにいるのはたった三年で、大きな波風を立てる位なら、平和に過ごした方が無難に思えた。
「大丈夫?」
「マジ、許せないよ!」
ハヤトの前席に座っている女子を両脇から支えるように女友だちが寄りそう。
項垂れているから本人の様子は伺えない。
でもハヤトには興味が持てなかった。
前席の関谷ヒカルは計算高い女だ。
すぐに女友だちを味方に付けて、悲劇のヒロインを演じたがる。
「アホくさ……」
声が聞こえたのか、そこに群がっていた女子が睨んできた。
鼻の穴に小指を入れてほじってみた。
違和感となった固まりがうまい具合に指先にまとわりついた。
「サイテー!」
窓の外に向かって指を弾く、放物線を描いて、乾いた物体が飛んでいった。
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