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週末を迎え数日がこんなにも長いとは思わなかった。
「出かけて来る!」
昼頃まで寝ているハヤトに母親は驚いた。
時計はまだ八時にもなっていない。
駅まで早足で十分。そこから片道二時間弱、見知らぬ町は随分と遠くにある。
東京にいて不自由を感じることがあるとすれば、豊富な情報と多彩な物欲をどうコントロールできるかだ。
例えばケーキを食べたいと思う。
方や十円の激安品があるかと思えば、店にさえ入れない高級店がある。
何もかもが複雑に分類されていて、自分という人間が何処に属するのか、否応なしに思い知らされる。
住んでいる街、通っている学校、親の職業に乗っている車。
平和は全てそれを土台に作られていた。
「は?」
改札で料金不足となった。
片道で千八十円。遠足なのかと見間違える金額だった。
「これで無かったら最悪だな」
ホームで下り電車に乗り、この先に待ち構える三度の乗り換え駅をもう一度、確かめた。
「御茶ノ水、秋葉原、守谷……。なんでアキバにないんだよ?」
ハヤトは早くもため息に襲われた。
とは言え、これも銀河に向かうためだ。
ウメちゃんやキタローには負けてられない。
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