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彼女は外を眺めていた。
「……ねぇ…貴方はこの雪をどう思う?」
白い着物の彼女は、控えめな美しさを純白の雪に魅せていた。
「……どう思う…とは?」
「私はね。この雪は、白い椿だと思うの。“申し分のない魅力”“冷ややかな美しさ”“至上の美”……儚くも魅了させるその姿は、散りゆく結末を迎えるの。」
彼女が手にした白い椿は、きっと愛される美しさを放っていたのだろう。
「……では、貴方はまさに赤い椿ですね。」
「……え?」
彼女は赤い椿に視線を移した。
「“気取らない魅力”“慎み深い”“謙虚な美徳”……大和撫子のような貴女には、きっとお似合いですよ?」
彼女はしばらく赤い椿を見つめていた。
「…私も椿であったら、共に散りゆくことが出来たかしら。」
ポツリと零れた想いは、誰にも注がれないまま、
“私は常にあなたを愛します”
儚い夢物語へと。
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