第1章

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「母。1つ寄越してください。権利を主張します。あなたに店主の話をしたのは、私です。」 「あら、相談に乗ったのは私ですよ。」 「菓子ばかり食べたら、糖尿になります。いいから、渡してください。」 70を越えた母と、40を越えた娘の、菓子を巡る駆け引きは、どうやら娘が勝ったらしく、一子さんは嫌そうに菓子箱を娘に渡した。 「母が世話になったのですから、こちらも県の名産品を送ろうと思うのですが、どうでしょう。」 「それはいいわ!あの方、神様に守られておいでなのよ!お供えも兼ねて、たくさん送りなさいな!私の分もお願いね。連名にするんですよ。」 「母は母で送ればいいではありませんか。」 「連名にしなさい。それとは別に手紙の返事はちゃんと出しますから。」 チッと娘が舌打ちをした。 どうやら、自分の名前だけで出そうとしていたらしい。 舌打ちを聞いて、下品ですよ、と一子さんが娘を扇子でぴしりと打った。
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