七月十八日正午

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 そう思っては、僕は非力な右手を見るのだった。触れたものの時間しか巻き戻せない力。これでは、事態を巻き戻すことは、やりなおすことは、できない。なんだよ、役立たずだな。  結局、夏休みが明けるのを待つしかなかった。二学期に入れば、否が応でも顔を合わせる。そうしたら、柚元の気持ちも聞けるだろう。 色あせた夏休みが過ぎていった。  九月に入って、今日は始業式だ。教室に入ると、彼女がいた。心臓がはねた。どれだけ首を長くして待っていたことか。ようやく会って話ができる。 「柚元」  僕は緊張を表に出さないよう細心の注意を払って、呼んだ。女子の輪の中で談笑していた彼女は、ちらりとこちらを見た。淡く笑った。そして、また会話に戻った。それだけだった。  耳元で何かが崩れる音がした。  僕は、フラれたんだ。
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