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あれから、柚元は僕に近づかないどころか、目も合わせなくなった。まるで、初めて話をした日より前に時間が戻ったみたいに。皮肉にも、そう感じた。
まわりのやつらは相変わらず僕に寄ってくる。けれど、僕が望んだことは叶わなかった。
意味ないじゃないか、これじゃ!くそっ、何がいけなかったんだよ!何でこうなったんだよ!
一学期の間は甘酸っぱい色にあふれていた景色が、二学期は灰色に見えた。クラスメイトが話しかけてくるのが、最初はいい気分だったのに、今はうっとおしくさえ感じる。
柚元の心を掴めなかったこんな右手…もう意味ないだろ。役立たずが、役立たずが…。
手首を掴んで呪っていた僕の肩を、ちょんちょんとつつく者がいた。振り向くと、後ろの席のやつがテスト用紙を回してきていた。
ああ、テストの時間終わったのか。難しすぎて考えるのを放棄していた。だからこんな時まで物思いにふけってしまってたのか。
僕は手渡されたテスト用紙を見た。ちぇっ、後ろのやつ、全部答え埋まってやがる。おもしろくない。
……そうだ。
僕はその答案に、そっと右手で触れた。
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