七月十八日正午

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 右手の新しい使い道を発見してからは、世界は再び輝きだした。ちょっと黒ずんだ輝きだけれど。  あれから僕は、小テストのたびに迷った答えを書いては消し、書いては消しと繰り返した。よく書き直す前の答案があっていたのにと後悔することがあるだろう。だが僕にはその心配がない。その時点まで答案を戻し、先生にこう言うだけ。「採点ミスです」と。  もちろん他の奴の答案を消すことにも余念はない。バツだった僕はマルになり、マルだったはずの他人はバツになる。実に愉快だ。  金に関しては、もっと大胆になった。堂々と財布を取り、その後記憶を巻き戻すだけ。笑いが止まらない。  悪いことをしているという自覚はあった。だが、誰も気づくものはいない。咎めるものはいないのだ。なら、こっちのもんだろ。  背徳感が醸す麻薬のような胸の高鳴りが、フラれたショックを塗りつぶしていく気がした。
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