七月十八日正午

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 日も短くなり始めた。僕はその日、不覚にも教室に忘れ物をした。放課後の階段を駆け足で登り、夕日の差し込む廊下を走り、教室のドアを開けると、そこには机に突っ伏して眠る少女がいた。柚元だ。  そういえば補習に引っかかって今日は居残りだって話してたのを耳にしたな。やってるうちに寝てしまったのか。  電気のついていない教室を照らす橙の斜陽。神聖さを感じるほどの静謐。  僕はそっと、柚元に近づいた。彼女は起きる気配を見せない。  思えば、彼女にフラれてから僕の秘密の非行は始まったんだな。  でも、恨むことはできない。なぜなら、僕は今でも彼女のことが好きだからだ。 僕の方を見てくれなくても、やっぱりあの笑顔やしぐさは愛くるしくて。  問うてみたい。どんな心境の変化があったのか。そうすれば、いまからでもやりなおせるかもしれない。
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