七月十八日正午

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 今確認されていることは大きく三つ。  まず、漠然とでも「この時間帯に」あるいは「この状態に」と念じれば対象物の時間を巻き戻せること。昼休みに頼まれた鉛筆削りも、「壊れる前の状態に」と念じたらその状態に戻ったのだ。  次に、巻き戻したものの運命は別の分岐した未来への道をたどりうること。つまり、あの鉛筆削りがしばらくしてから定め通り壊れる、ということはない。扱い次第だ。  そして、巻き戻せるのは一つの対象物につき一度だけということ。ようは、あの鉛筆削りにもう僕の力は効かないということだ。  この力のおかげで、友達なんて一人もいなかった僕は今やクラスメイト達に頼られる存在となった。パームヒーリングの使い手、修理上手、手品師。そんな異名を耳にするほどだ。入学以来、生来のネクラのせいで遠巻きにされてきたのが今や人気者だなんて、気味がいい。  けれど一番この力に感謝しているのは、「彼女」に近づくチャンスを与えてくれたところだった。
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