第1章

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ドアを開けて廊下に出ると味噌汁の匂いや炊きたてのご飯の匂いが漂ってきた。 「ん?今日はもう皆居ないのか……」 俺と美幸が居るのは立派な一戸建てでもマンションでもない。 『翔龍館』と言う名前の身寄りのない子供が集まる施設なのである。 俺と美幸の両親は小さい頃蒸発してしまってこの翔龍館に引き取られた。 幸い二人とも回りに恵まれ、道を逸れることなくここまで育ったのだが。 「あっ、やっと起きてきた。兄さん早く朝ごはん食べてくださいね。」 12時なるかならないかの時点で朝ごはん扱いとは……美幸の性格からしたらこの後間髪入れずに昼御飯が出てくるのだろう。 「ごめんな、早く食べるわ。」 「そんなに慌てて食べるとまたこの前見たいに喉に詰まられせますよ?」 「うっ、そ、そう言えばそうだった……」 美幸に言われた通りゆっくりとよく噛んで食べることにした。 「兄さん今日はクリーニング屋さんに制服取りに行かないとダメですよ。忘れないで下さいね。」 「ふぁーい……」 明日から俺が通うことになる学校(愛知波特別学園)は真っ白な純白の制服が特徴である。 それゆえに、家庭での手入れが非常に難しくこの地域ではクリーニング屋さんが大繁盛している。 「うーん……今から行けばそこまで混んでないか……よしご飯食べたらさっさと行ってくるか。」 「それが良いですよ。兄さん。あとそのついでにお使いをお願いしますね。」 そう言って買うものが大量に書かれたメモを渡された。 うん、凄い量だ……これは知り合いに頼んで車を出して貰わないと無理だな。 そう思いながら俺は私服に着替え外に出ていった。 外は春らしい柔らかい日差しが降り注いでおり非常に過ごしやすい気温だ。 この地域は愛知の海側に超巨大なメガフロートを浮かべて出来た地域で、名前は愛知の《知》フロート自体が海での航行が可能であり波を切る事から《波》を取りに『知波』《ちは》と言う名前になっている。
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