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--雨音、好きだ--
雨音:「…っ…」
夢を見ていた。
それはあの日、オレンジに染まる教室での出来事だ。
思い出せないのに、いつも繰り返し夢を見る。
愛しむように、大切に大切に…。
ーーー
いつも学校の放課後に皆で集まってお話をするのが私の日課だった。
女の子達から遠巻きにされていた私の周りには自然と男の子の友達が出来ていた。
私はオカルトが好きなのだが、それがきっかけで女の子は次第に近づかなくなっていった。
男の子の方が私の話をわかってくれる。
だから私はあくまで"友達"を好きになっていた。
皆のことが好きだった。
皆とたわいないお話をして、一緒に帰って、ってそんな時間が好きだった。
今日だって同じだ。
ーーー
「…この都市伝説には実はもうひとつ説があって……。」
「…でもそれは不自然だよな?…」
「…それなら………の方が面白くね?…」
なんて会話、確かに女の子には嫌われるよね…。
だけど私には皆がいるからもういいの。
ーーー
「…なぁ?今日ゲーセンいかね?」
「あー今日バイトなんだよな、悪ぃ!」
「俺も金ねーや」
「ええーーー…」
ーーー
雨音:「…これは聞いた話なんだけどね………」
「いいねーそーいうの…」
「そこちょっと行ってみたいかもな」
「お~?行っちゃう?今度」
ーーー
幸せな日々の繰り返しだ。
毎日毎日、ただ感じる幸せが愛しかった。
皆と過ごす永遠に続きそうなかけがえのない時間。
ーーー
--雨音、…ありがとう…--
雨音:「…!!」
あの夢とは違う夢を見た。
オレンジでもなければ教室でもない場所。
暗くて不気味な森のなかだった。
そしてその声は確かに友達の中の誰かのものだった。
その人がどんな顔をしていたか、私には思い出せない。
ただ胸がざわざわして苦しかった。
雨音:「…違う、こんなんじゃない…私は……」
雨音:「…私、は…!」
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