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私たちは後悔した。
自分達の間違いに気づき、もとに戻そうとした。
甦った人をもう一度殺し、1人欠けたもとの世界に。
だけど誰が死人かわからない。
皆には死にそうになった過去があった。
次第に思い出していく記憶のなかで、ついに気づいてしまった。
私はあの日を、思い出してしまったのだ。
ーーー
あのオレンジに染まる教室に2人。
「雨音、好きだ」
雨音:「…ぇ…」
「俺、雨音が好きなんだ」
雨音:「そ、…そんなこと………」
恥ずかしくて俯いてしまう。
「悪ぃ、困らせたい訳じゃなくて……」
雨音:「っ私、は………」
声を出したその時、廊下から声が聞こえた。
「おーい!!雨音帰るぞー!」
雨音:「!!」
「…雨音、行こう」
雨音:「…ぅん…」
ーーー
いつものように皆で帰るオレンジ色の道。
赤くなった頬を隠すように俯いて歩く私。
皆の話なんて今の私には聞こえなかった。
その時、
「…おい、雨音!」
「っ雨音!!」
雨音:「…ぇ…?」
やっと聞こえた皆の声と、私に迫る車。
それは一瞬の出来事だった。
ーーー
…そうだ。
そうか、私が死んだんだ。
どうしてもっと早く気づかなかったのかな。
私はあの車に退かれて死んだことに。
もっと早く分かっていれば、皆を疑って、傷つけたりしなかったのに…。
雨音:「…終わらせよう」
私が、この手で終わらせよう。
これ以上、皆に迷惑はかけられない。
そう思い立ち、私は儀式を行ったあの不気味な森へと足を踏み入れた。
ーーー
私が居なくて正解の、元の世界へ皆を返してあげなくちゃ…。
私が死ねば全てが終わる。
そう思って来たのに、そこには先客がいた。
あの日、私に告白してくれた彼だ。
雨音:「…何、してるの?」
声を掛けると彼はゆっくりと私をみてとても悲しく笑った。
「これを、壊そうと思ってな」
彼が持っていたのは儀式に使った遺品だった。
遺品を壊せば死人は再び死ぬ、それがこの儀式を解く方法なのだ。
それを彼も思い出したのだろう。
「これが壊れれば、皆もとに戻るんだよ…」
雨音:「うん…」
つまり、壊せば私が死ぬ。
同じことを考えていたんだね。
雨音:「…私が壊すよ」
雨音:「…思い出したの、本当は私が…」
雨音:「………死んでるの」
私の話を彼は静かに聞いてくれた。
「…そうか」
悲しそうに頷いた。
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