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雨音:「…だから私が壊すよ」
彼に、皆に迷惑はかけられない。
これ以上罪を着せたくない。
怖くないわけがないが、私がやらなければいけない。
皆は一体どんな思いで私を甦らせたのだろう。
せっかく甦ったのに、こんな結果になってごめんなさい。
思うことはたくさんあったけど、もう終わりだ。
…決心が、鈍ってしまう…。
「…一緒に、壊そう」
彼のその一言が、断れなかった。
断らなきゃいけないのに、今にも泣いてしまいそうで、断れなかった。
2人で同じ石を持って遺品を壊そうとする。
だけど、私は違和感を感じていた。
彼がどうして一緒に、何て言ったのだろう。
なんでこんなにすんなりと壊そうとしているのか。
私は怖くなっていた。
「大丈夫」
そういう彼が、あんまり優しく笑うから更に怖くなった。
雨音:「待って…」
まさか、が心を締め付ける。
思い出せ、私は死んだはずなんだ。
そんなはずはない。
だって私は車に退かれた筈なんだ。
だから、消えるのは私のはずだ。
泣き出した私の声は震えていた。
雨音:「…誰が、死ぬの…?」
振り上げた腕を下ろしながら彼は答えた。
「…俺だよ」
雨音:「っ!!」
ーーー
私に向かって突っ込んでくる車に、私は動けずにいた。
理解も追い付かないまま私は死ぬと思った。
その時、私は突き飛ばされ丘の上を転がった。
咄嗟に車が走っていたところを見て私は愕然とした。
そこには動かなくなった血まみれの彼が横たわっていた。
駆け寄っても、既に息はなく、病院で死亡が確認された。
ーーー
雨音:「…それじゃ…」
私じゃなく、彼が消えるということ。
ぼろぼろ泣きながら彼の名前を何度も呼んだ。
繋いだ彼の手の温度。
今にも消えてしまいそうな彼。
その笑顔が、辛かった。
そしてふとあの告白を思い出した。
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