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「おい!あかり!!!」
「「……あかり?」」
俺、小柴快晴は、今とても気まずい雰囲気のなかにおかれている。
今日は大晦日。俺たちはもうすぐ日付も終わろうかというときに、近所の神社に初詣に行くことになった。
俺たち3人の前には、緋李とケンの母親が歩いている。
後ろで3人並んで歩いていた俺たちは、確かにさっきまで和やかな雰囲気だったはず。
突然のことに沈黙を貫き気持ち悪さを隠しもしない緋李に、それを全く気にしない空気の読めない男・原田健太。
「…ケン、どうしたの」
「どうしたのってなんだよ!あかり!!」
緋李の名前を強調して叫ぶケンに、俺と緋李は顔を見合わせる。
彼らは小学校最後の年の大晦日、ついに決別してしまうのだろか。
そして一体なにが問題なのかというと。
「あのさあ、ケン。どうしていきなり名前で呼ぶのさ」
そう、緋李のことを「あかり」とケンが呼んだことに違和感を感じていたのだった。
ケンは普段、緋李のことを「あっちゃん」と呼んでいる。
俺はこの2人と出会ったのは小学校に上がってからだが、この2人はほぼ生まれた時から一緒の正真正銘、幼馴染だ。
きっと小さい頃か呼び名は変わっていないはず。
「べっべつになんもないし…おれ、今日から名前で呼ぶから!!」
「はあ?」
口笛を吹きながら斜め上を見るケンを、容赦無く睨みつける緋李は相変わらずあたりが強い。
「カイさん、こいつどうしちゃったの?」
「さあ…とりあえずなんかおかしいのはわかる」
「こいつがおかしいのは生まれた時からだから」
…あたりが強い。
緋李は人当たりはいいし、普通の交友関係を築いている、普通の性格のやつだ。けど、ケンは昔馴染みだからか容赦がない。
緋李はケンを一瞥し、「ふぅん」というと俺を見やった。
「じゃあカイさん、俺たちもケンのことはこれから健太って呼ぼうか」
「うん……うん!?」
「なっなんでだよお!!!」
どうしてそうなる。
まあ確かにいきなりあだ名から名前呼びになることは驚きだが、それ自体は珍しいことでもないだろうに。
この2人は喧嘩をするととてつもなく面倒なのだ。俺は中学生、年上である。なんとかせねば。
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