86人が本棚に入れています
本棚に追加
年が、明けました。
あ、あけましておめでとうございます。
こっちはまったくおめでたい感じではないけれど。
「…綾瀬川先輩」
「なに?」
「俺、そろそろ何かしないと、気がおかしくなりそうです」
そう、俺はもともと何か身体を動かしていないとモゾモゾしてしまう性格だ。ストレスがあろうものなら、尚更。
「綾瀬川先輩、飯、作らせてください。あ、お手伝いさんがいるとかそういうのはいいんで、俺のためをおもって、飯、作らせてください」
「…わ、わかった、よ」
俺の押しに綾瀬川先輩はわずかにたじろいで、了承してくれた。
「テメエは日が過ぎるごとに態度がデカくなっていくなァ?」
厨房に立つ俺に声をかけたのは、河南さんだった。
「なんですか、料理人以外立ち入り禁止ですよ」
「料理なんかできんのか?」
「松山クッキングと一緒にしないでくれます?」
「……あれと比べりゃなんでもうめえか」
松山、お前河南先輩にここまで言わすなんて、いったいどんなゲテモノを…。
さすが、地獄のクッキングの異名を持つ男だ。
***二時間後***
「おいしい…!」
綾瀬川先輩はそれはそれは眩しい笑顔を浮かべて、俺の料理を頬張っている。褒められると悪い気はしないし、これがかなりストレス発散になる。
「綾瀬川先輩、これから先輩のご飯、俺に作らせてください!」
「うんわかった」
食い気味な即答であった。
***数十日後***
「おい。おい」
それからというもの、毎日俺が食事を作り続けた結果。
「おいバカ。優人」
「…なに」
「お前、鏡、見ろ」
綾瀬川先輩は、激太りしました。
「テメエ、仮にも綾瀬川の長男がこんな…こんなぽっちゃりになっちまったなんて…」
普段ならクソデブくらい言いそうな河南先輩が気を使うくらいにはぽっちゃりになむてしまった綾瀬川先輩。
「おいコラ、テメエ、これから食事制限とダイエットだ。…渡辺ェ、綾瀬川が太りやすいと知っての行動たぁ、やるな」
「いやいやいやいや」
「情けねえ…情けねえぜ、こんなだらしない身体の主人なんてよォ…」
「ぷにぷにの先輩もかわいいですよ」
「うるせえ」
この年始、意外にも美意識の高い河南さんが垣間見ることができました。
おわり
最初のコメントを投稿しよう!