第1章

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人の心が読める力  目の前で、人が死んだ。  信号無視の若い男の人が、速度違反の暴走車に、はねられて、大きく飛んだ。  どさっと落ちて、動かなくり、目を大きく見開いたままのその人と、目が合った。  その時、その瞬間、その人の意識が、流れ込んでくる様に、聞こえた気がした。  (助けて。)  女の私には、かなりキツイ、事故現場に直面して、衝撃に落ち込む間もなく、落ち込んで居られない自分に、気が付いた。  事故の目撃がきっかけで、人の心が読める様になってしまった。  テレビドラマで見る様な、便利な特殊能力とは程遠く、困った事に、どの言葉が、どの人の言葉なのかが、判らない。  ただ、メールの送り主の心は、それと分かった。  それは、文章とは全く違うモノから、内容を裏付けるモノまで、ちょっと効率が良かった。  ケイは、私が体調悪かったのを、本気で心配してくれている。  普段はクールなのに、意外な優しさだな。  今度から、彼女の言う事を、もう少し、ちゃんと聞いて、イヤミを言うのを、控えよう。  スマホが鳴ると、相手が分かるのと同時に、相手の心が分かる。  ここの処、妙に気を使ってくれる、アユは、この間の私が着ていた、ワンピースを狙っている様だ。  おっとりしてても、下心ありか。  外を歩いていると、不意に流れ込んでくる。  うきうきしてる物から、真っ黒な物まで、心の闇とは、よく言ったモノだ。  一番キツい、自殺者の心だ。  長距離ミサイルの様に、何処からともなく突き刺さり、大ダメージの断末魔。  夜の、その自殺が当てはまるニュースで、その場所の遠さに、驚いた。  遠くだろうと、建物の中だろうと、そのミサイルは、凄まじい威力で、飛んできて、防ぎようも、助けようも無い。  ツイて無い。  カフェに入ったら、チャラチャラ、アホ女のグループが居た。  幸い、男の話に夢中な様、と云うより、ソレしか考えていない。  悪口言ってる男は、そっちの子が本気で好きな相手。  もう一人話題にした男は、そっちの子が内緒で、付き合ってる。  自分は好かれていると、思い込んでるこの女、そっちの二人に嫌われているのを、気が付いていない。  たぶん、モテない自分を正当化したくて、悪者作りに必死なんだな。  外人さんのカップルだ、何処の国の人かな。  不思議と、日本語というか、心が理解できる。
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