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「へい!スカーレット!きてやったぜ。」
スカーレットがいつも仕事をしている部屋の前に着くなりドアを蹴り開けてそう叫びながら部屋にはいる。
「ん?お前様よ。あやつは誰じゃ?」
部屋の中で待っていたのはスカーレットではなく、黒色の髪を肩にかからないくらいまで伸ばし黒の眼鏡をかけた男だった。
身長はグレイより少し低いくらいだろうか。
「んだよ、ジルじゃねぇか。スカーレットはどうした?」
「マスターは聖十大騎士の召集で不在だよ。なんでも急用だそうだ。」
冷静な口調で、スカーレットがいつも座っている机とは別な机で、黙々と少し大きめのタブレットを操作しながらジルはそう伝えた。
急用…………ね。
十中八九、ティアラのことだろうな。
「まぁいい。俺からの頼みは聞いてんのか?」
「ああ、既に済ましてある。後はうちのタブレットを渡すだけだよ。」
ほら、と言ってジルはティアラにグレイが持っているものと同じ型の黒のタブレットを渡した。
型はギルドのメンバー全員同じではあるのだが。
「おぉ!お前様と同じものじゃ!助かるぞ、小僧。」
ティアラは心底嬉しそうにそれを受け取った。
「小僧って………。まぁいいや。それにしても、本当に旅に出るんだね。残念だよ。とっても使える…………ああ、悪いね。頼りになる仕事仲間だったのに。」
「ちっ!ったく、すかしやがってこのくそメガネ!!嫌みな野郎だ。」
ジルはスカーレットの右腕でもあり、ギルドのNo.2で、情報管理や事務を任されている。
しかも、戦闘もなかなかのものなのだ。
しかし、グレイをよくこき使っていた。
まぁ、それだけ頼りにしているということでもあるのだが、ジルは基本的に誰にでも嫌みを言うのでグレイはそこが気に入らないらしい。
「まぁいい。ジル、てめぇも元気でな。俺に勝てるようになっとけよ。」
「減らず口を……。まぁ、それも聞けなくなると少し寂しいものだね。」
ジルはグレイの闘い方と相性が合わないため、グレイには勝ったことがない。
グレイはその場その場で機転を利かしたうえに、予想外な攻撃に転じる根っからの戦闘バカなのだ。
一方、ジルはその高いIQを生かし、戦力を練り、相手をよく観察して闘う。
突拍子もない事をしだす予測不能なグレイとは相性が悪い。
故にグレイ相手に戦うのは苦手なのだ。
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