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「まぁでも、お前と組んでの仕事は楽で助かったぜ。じゃあな。」
ジルとグレイは何度か一緒に仕事をしたことがあり、戦闘の時はジルのサポートで助けられたことが数えられるくらいにはあった。
例えば、どうしようもなくなった時の退避経路など、ジルが機械を扱えばすぐに分かる。
まぁ、基本的に退避なんてことグレイには無縁だが、それ以外でも索敵や入り組んだ道等ではジルに助けられた事がある。
「ああ、僕も助けられたよ。また一緒に仕事ができるならその時はよろしく頼むよ。じゃあね。白銀。」
ジルの言葉に反応を示さず、グレイはそのまま出て行った。
「白銀って呼ばれるの好きじゃねぇの知ってて呼びやがるからたち悪いぜ。」
「白銀とはお前様のことか?」
「ああ。知らねえうちにそう呼ばれるようになってた。たぶん、この刀と髪色のせいだろ。」
「ほぅ……、なるほどの。」
実際は違うんじゃがのぅ。
まぁ、儂が言うわけにもいかぬの。
自分で記憶を取り戻すと言っておるわけじゃし。
「して、もうここを出るわけじゃが、まずはどこへ向かうのじゃ?」
「とりあえず、中央(セントラル)の方へ向かう。中央まで行けばまともな情報が入るかもしれない。」
中央(セントラル)。
このクラウド大陸で一番大きな国、ギルバート王国の中心には中央(セントラル)と呼ばれる都市があり、都市の中心には大きな城が立っている。
その周りには塀があり、その周りは上級貴族が住み、また塀があり、その周りには貴族が………。
そんな感じで身分に完全に差をつけており、ギルド等を除く、国の管轄している軍の力が一番の都市でもある。
軍関係者も身分の違いに合わせるように一番外の外壁から城の方へ向かうに連れ屈強な者になっていく。
「城の方まで侵入するつもりはないし危険はないだろ。あるとすれば情報を得る時くらいだろうな。」
「カカッ!危険なのは大歓迎じゃろ?」
「ああ、もちろんだ。すぐにこいつでぶった斬ってやるよ。」
そう言ってグレイは白銀の刀の柄を握りしめた。
我が主様はあのことさえも覚えておらぬだろうのぅ。
この相棒である刀の名さえ覚えておらぬのじゃから。
また、ギルドの建物内の廊下をスタスタと歩き始めたグレイの背中を目を細めて見つめるティアラは一人、心の中で呟いた。
「なにしてんだ?置いていくぞ?」
「カカッ!そう慌てるでない。」
それから2人は本格的な旅に出た。
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