始まりの依頼

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空間能力。 まんまな名前ではあるが、別空間に物を置いておくことができ、いつでも取り出すことが可能な能力。 そして、圧縮空間ケースはその能力を小さなケースに与えた道具である。 こちらは入れられる物のサイズに制限があり、非常食や弾丸、お金等を入れる物である。 スカーレットが使うその場で空間から物を取り出す空間能力は主に武器や大きい物を取り出し、仕舞う為に使う者が多い。 但し、空間能力については使用制限があり、一般的には扱えない。 ギルドや軍に所属している者でも実力がある者しか扱えないのだ。 理由は単純に体力を多く消耗するからだ。 スカーレットがさっき、何もない場所で刀を取り出したのはその能力である。 「旅に出る時には使わせてもらうよ。俺は基本、相棒はすぐそばに置いときたいしな。」 そう言って、グレイは腰のマグナムと白銀の刀を触る。 「旅か。いい機会だな。ちょうど、お前に頼みたい仕事があってな。もしかすると旅の始まりになるかもしれんぞ?」 スカーレットは意味深なことをいい、机の引き出しから一枚の紙切れ、もとい、書類を取り出してグレイに渡す。 「は?これ難易度SSクラスの仕事じゃねぇか。いいのかよ?ギルド入ったばっかで、ハンターランクCの俺にこんな仕事頼んでよ。上にどやされんぞ?」 大陸の各地に多くのギルドがあるが、ここ、ギルバート王国のギルド、Fairies(フェアリーズ)は有名で、ランクの高い仕事も多々ある。 その分強者揃いなのだが、仕事が多い分人手不足なのも然り。 とはいえ、基本的にそのハンターよりランクの高い仕事は受理してはならない。 そんなことをすれば、全ギルドを取り仕切る聖十大騎士(せいてんだいきし)に何かと言われかねないのだ。 ちなみに、聖十大騎士は各国ギルドから選ばれた人間が集まったもの。 聖十大騎士の中にも序列があるが、グレイの目の前のこのリロイ=スカーレットはFairiesのギルドマスターであり聖十大騎士の序列7位。 グレイはいくらスカーレットでも、より上の奴らに何を言われるか分かったもんじゃないと、そこだけを気にしている。 別に仕事を引き受けるのは問題視していない。
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