第1章

2/2
前へ
/2ページ
次へ
B「まさに立てば芍薬。座れば牡丹。歩く姿は百合の花ね。」 カメラの先、物憂げな表情な彼女に向かって、そんな事を思わず呟く。 すると、彼女は栞から視線を逸らして、軽く睨むように眉を寄せて、私の方へ振り返ってきた。 A「…姉さん!早くさっさと撮ってよ!着物、結構きついんだから!」 B「はいはい。」 形の良い唇から零れた声は、外見のわりに低い。 …まあ、男なのだから当たり前なのだけれど。そんな事を思いながら、急かされてカメラのシャッターを切った。 ーカシャ。 画像を確認すれば、良い出来栄えである。 少女らしいあどけない美しさの中に、物憂げな表情が更に引き立っている。 …次に出る写真集も、先行きが安定かな。 そう思いながらも、ガシガシと鬘を掻く実の弟を見つめる。 最近売れっ子になった少女モデルが、実は男で。姉弟共にグルだなんて、誰も思うわい。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加