第12章  聖夜の魔法

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しかし、こうして一日の仕事が終わり、 那々は、こっちの妙案も思いつかないまま、立花と共にオフィスを後にする。 ところが、色に出にけりとでもいうところか。 「もしかしてさ、どこか具合でも悪い?」 地下鉄に乗って間もなく、隣に立つ立花にちょっと覗きこまれた。 えっ……? すっかり胸の内を読まれていたかに尋ねられ、 那々は、慌ててかぶりを振り返した。 「いえ、全然」 「そう? でも今日は、なんか元気なかったよね」 思わずドキッと、心臓が縮まった。 そして、急いで取り繕うように少し歪んだ笑みを浮かべ、 頭の中で、必死に言い訳を探し求める。 しかし、 「あの、なんていうか、今日はどんな風におもてなしすべきなのかなぁ、 なんて思ってて……」
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