45人が本棚に入れています
本棚に追加
『あ!やだ、もうこんな時間。』
絵里さんが腕時計を見て、声を上げる。
「今から用事でも?」
『そういうわけじゃないのよ。旦那が帰ってくる時間なの~。』
やんなっちゃうわ、と財布から万札を取り出し肩を竦めた。
気色悪いものを思い出したかのように、苦笑いをする。
『そういうわけだから後は若いお二人で楽しんでね。お金はシンちゃんの分も払っておくから』
お札をテーブルに置けば、席を立った。
自分で払います――、とシンが断りを入れれば、絵里さんは首を振った。
『それくらいいいわよ。それより。隆太くん、手出しちゃ駄目よ~』
「だ…っ、絵里さん、だから…!」
慌ててそれを否定すれば、面白そうに絵里さんは高笑いして店を出て行った。
……。
「……(はぁ)」
ドッと肩の力が抜ける。
歳上の絵里さんは、人を誂うことが大好きだ。
いつもまんまとペースを乱される。
ここだけの話、正直苦手。
最初のコメントを投稿しよう!