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それはお前からだった。
『……理解できない』
いつもの心地よく低い声が、少し戸惑いを混ぜて吐かれる。
それは、すぐに屋上の静けさに吸い込まれ、消えた。
俺はただ、その言葉に呆然と立ち尽くしたまま。
初めて投げかけられた拒絶の言葉。それに暫く身動きが出来なかった。
アイツは顔を引き攣らせ、そのままくるりと背を向け、俺の元を去っていった。
一人になった屋上は、凍えるような冷たい風が吹く。
虚しく俺の髪を揺らした。
「…っ、は」
滲む視界の中で、ガクリと膝が落ちる。
髪の毛の中に指を食い込んで、グシャリと掴んだ。
堪えきれなくなった涙。瞳から溢れ出し、頬を伝った。
ポトリ、と黒いシミが灰色の地面に浮かび上がる。
「…はは、っ、ははは…」
アイツのぐちゃぐちゃに歪めた顔。
それが再び脳裏に浮かんできて、何故だか笑いが込み上げてくる。
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