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『ご馳走サマ。』 親指で漏れた唾液を拭き取ると、官能的な微笑みを浮かべる。 「――――ッ、」 俺はすかさず口元を隠した。カァ、と羞恥心から一気に身体に熱が帯びていく。 『思ったより余裕無かった?息、上がってる』 クスクス、と耳元で笑い声が聞こえる。 「な、」 『可愛い』 反論しようかと口を開けば、耳元の甘言に遮られる。 途端にそっと俺の髪の毛を愛撫し、柔らかな表情をした。 きゅう。それが余りにも愛寵に満ちた眼差しで、不覚にも心臓を掴まれる。 ―――ヤバイ。 「…っ、退いてください…!」 火照った顔を隠すように俯き、あるだけの力で胸板を押す。 シンさんはよろり、と後ずさった。 「何されても、俺は貴方とは寝ないから…!」 『…。』 「なのでお互い今のことは忘れて、明日からは――」 『――いつ俺が〝うん〟なんて言った?』 明日からは客とバーテンダーに戻りましょう。 俺が言いたかった言葉は、シンさんの露骨に挑発的に吐かれた言葉でもみ消された。
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