2

14/15
前へ
/67ページ
次へ
『別に良いよ。望月さんが俺を〝そういう目〟で見れなくても』 「……、」 『でもさ』 シンさんが、また傍に寄る。 俯いた視界からは、シンさんのブラウンの靴だけが確認できた。 『きづいてた?望月さんが途中から自分のこと〝俺〟って呼んでたこと。 それ、仕事忘れるくらいに俺に心許し始めてるってことだよな』 「違、」 それは咄嗟に。あんなことされたら誰でも―― 『って。勝手に自惚れておくけど。』 少し自嘲気味に笑って、寂しそうな表情を見せる。 「…、」 『取り敢えず。俺は身を引くつもりはないから。それに今日〝確信した〟』 地面を見つめている俺の顔を覗き込むように、耳元で囁く。 『もう簡単には逃さねえから覚悟してよ、望月さん』 ビク。 耳元で溶けてしまいそうなほど蠱惑的に鼓膜をくすぶれば、〝ふ〟と息を漏らし、カッカッと靴の音を鳴らして店内に戻っていった。
/67ページ

最初のコメントを投稿しよう!

45人が本棚に入れています
本棚に追加