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静かになった路地裏。 「…なんなんだよ。」 もたれかかったまま、ずるずると腰を下ろして、しゃがみ込む。 ふと空を見上げてみれば、一面に全てを飲み込んでしまいそうなほどの果てしない黒と、堂々と光を放つ星の姿があった。 こんなときに限って、嫌味だ。 自分とは対照的に輝くそれを見て、ぶっ壊してやりたい気持ちになる。 「いっそ、雨でも降れ。クソ天気」 降って、降って降って降りまくればいい。 俺の髪の先から足のつま先までに、鬱陶しくなるほど浴びせてくれ。 「…あー、うるせー」 どくん、どくん。 さっきから止まない、この胸の高鳴りが聞こえないくらいに音を立てて。 シンさんが触れた場所を塗り替えるようにして、洗い流してくれよ。 「…好きじゃねー。好きなわけねー」 ―――俺は二度と誰かを好きになんかならねーよ。 自分に言い聞かせるように何度も呟く。 ぎゅっと目を瞑って脳裏に浮かんできたのは、卒業式の鳩羽の歪んだ顔だった。
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