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自分でも、分かってはいる。 曖昧な関係をこのまま続けていたら、俺じゃなく、きっと相手の方が傷つくことになる。 ある男を忘れるために利用され、抱かれていたなんて知ったら、一体何人の奴等が俺を恨むんだろう。 それでも。俺は、止められない。 どっぷりと、這い上がれない所にまで体の隅から溺れてしまった。 相手に欲される、快感に。 「俺にはこういうのが性に合ってんの。」 携帯のアドレス帳を眺め、下にスクロースしていく。 覚えてない名前多数。お店の常連さん少数。 学生時代の連れ、そこそこ。 情けなくなるようなその状態に、ふ、と息が漏れた。 今日は誰と過ごそう。 暇そうな奴、……後で電話かけてみるか。 そんなとき横から『あーあ。』なんて、高い声。 『…ほんと詐欺。見た目は誠実そうな顔してるのに』 「誠実そう?俺が?」 『中身はクズだから安心して』 「(……クズ。)」 痛い一発を俺にくれた彼女は、寝室を出ようと扉へ向かう。 そこで、ふと。 思い立ったかのように、足を止めこちらを向いた。
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