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それは、――――目を見開いたシンさんだった。 昨日の出来事が走馬灯のように頭の中でフラッシュバックし、全身が硬直する感覚に陥る。 暫く視線を奪われていたとき。 ほんの一瞬、薄い唇の口角が上がったのを見逃さなかった。 「うおっ」 下半身にひんやりとした衝撃が走る。 視線を落とせば、スラックスに黒いシミが出来ていた。 「なっ、」 どうやらテーブルに置かれるべきだった筈の水を浴びせられたらしい。 『す、すみません!すぐ拭きますんでお手洗いの方に…!』 「は!?」 態とらしく慌てる目の前の男。 ぐいっと手を引かれて、席を立たされる。 「ちょ、待て…!別に態々行かなくても」 『大丈夫です。拭き取るだけですから。』 俺より長身で細身な背中の後を追う。 引き離そうと手首を捻ってみても、シンさんの力には敵わない。 「あの場でも出来るだろ――!」 『いいから。黙って付いて来てください、望月さん。』 「…っ」
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