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―――カランカラン
店の扉が開く音がして、バッと絵里さんから離れる。
直ぐに平静を装って、いらっしゃいと声を掛けた。
そこに立っていたのは、長身でロングトレンチコートを羽織っている男性だった。
黒縁の眼鏡を耳にかけて、赤色のマフラーに顔を埋めている。
『ああ。彼よ。さっき話した子。』
バーに慣れていないのか、きょろきょろと挙動不審に店内を見回している。
こっちこっち。と、絵里さんが手招きすれば、それに気付いたらしく、カウンターの方へ向かってきた。
『すみません。…こういうの、慣れてなくて。』
ロングコートとマフラーを脱いで、チェアーに腰をかけた。
緊張しているのか、体を固めて微動だにしない。
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