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「先生、初デートはどこに行く?」
神奈木蜜子は唐突だ。
話の脈略の概念が存在しないのは最早前提で、何よりも行動が短兵急なのだ。
休み時間ごとにこの部屋へ足繁く通う日もあれば、一週間丸々顔を見せない時もある。
だからといって俺が困ることはないのだが、押し掛けてきた時は必ずこうして、パソコンや書類を押し退けて机に鎮座し、脅迫を始めるのだからたちが悪い。
ぞっとするほど白い太ももを曝け出し、圧倒的な高さから俺を見下ろす。
ぞんざいに返事をしようものならば、ネクタイを掴んで「ねぇ先生」と首を傾げることもある。
言うことを聞かない犬の縄を引くように。
「神奈木。お前はもうすぐセンター試験だろ」
「K大理学部、A判定だから」
「へぇー、そうかい」
俺が2浪という荒波を掻き分けて辿り着いた先を、近所のコンビニ程度に言ってくれる。
天才とバカは紙一重だ。ぜひ神奈木蜜子の脳を解剖してみたい。
そんなふうに思うのだから、俺も化学者の端くれであるのは間違いないのだろう。
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