俺たちの遺伝子は交わらない

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「君の遺伝子と交わりたい」 「何だそりゃ」 「告白の言葉。頭悪そうでしょ?」 「ロマンチストを目指した理系男子の精一杯だ。大目に見てやれよ」 「先生、遺伝子は交わらない。遺伝子は『遺伝情報』の1つの単位であって――」 「ンなこたぁ分かってるよ」 俺と神奈木蜜子は何もかもが噛み合わない。 例えば今朝。 登校して早々に部屋にやってきた彼女は、朝食だと言ってタッパーに入れてきたステーキ200gを米なしで食べ始めた。 胃が弱りつつある俺はげんなりだ。 他にも挙げていったらキリがない。 彼女は棘を持つバラをも容易く手折り、俺は地べたに這いつくばるタンポポさえも愛おしく思う。 彼女は俺に好かれることのみに熱を注ぎ、俺は彼女に好かれないことのみに熱を注ぐ。 俺たちの遺伝子は交わらない。
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